UXデザイナーの信頼を取り戻すために考えてみたこと:組織編

2017年1月16日

随分と日が経ってしまいましたが、この会の続きです。

UXデザイナーの信頼を取り戻すために考えてみたこと:スキル編



このイベントでお話した「組織への浸透」について、これまでの経験談で思ったことを書いておきます。

HCD-Net認定専門家と交流 ラウンドテーブルイベント
http://www.hcdnet.org/hcd/event/entry–973.html

再び書いておきますが、所属する組織やHCD-Netの見解ではなく、あくまで私個人の考えです。

 

スキルと組織は一緒に考えるべきなのか?

今回の話題提供の後に、グループ毎にワールドカフェ形式で話し合う場がありました。

そこで、「スキルと組織は別々に考えるべきか、または一緒に考えるべきか?」といった話が挙がりました。

個人的には、「スキル」と「組織」は別々で分離して捉えたほうが良い派です。

理由はこの2つを一緒に話すと、参加者の各々の背景で「スキル」と「組織」の定義が定めらない状態から話が始まり、分離ができなくなる場合があったりまします。

「スキル」の話をしているにも関わらず、「組織」の話を持ち出してきたりと、話し合いが混乱して、ずっとループし続けるてこともあります。

「スキル」はあくまで個人に紐づく定義で話をしつつ、その上でどのようにテーマを「組織」へ紐付けるかといった点で話していくのが分かりやすいと思います。

 

組織への浸透は「UXデザイン」に限らない話である

今回のテーマは「UXデザインやHCDを組織へ導入するために」という会でした。

なので、「UXデザイナー」のスキルや組織での立ちふるまいなどについて、いくつかの話題提供ごとに集まり、話し合いの場が設けられました。

話し合いの場では、参加者から現場で、UXデザインやHCDを実践や浸透させるのが大変といった声を聞ことも多く、10年ぐらい前にも似たような社外の勉強会で「ある手法」をどうやって会社へ導入するのか話し合っている場を思い出しました。

その時はシステムの開発手法で「アジャイル開発」が広まり始めたころでした。

そこでは「自社でアジャイル開発をやりたいけど、ウォーターフォール型でとても難しい。」といった話があり、この話題に対し、アジャイル開発を導入している現場の人が可能な限りの相談やアドバイスをしていました。

これって、UXデザインをやりたいといっている人達と同じ流れだなと感じました。

 

アジャイル開発とUXデザインの導入でどこが同じ流れなのか

新しい仕組みを導入したい背景には、下記の2点を同時に発生してたりすることが多いなと感じます。

  • 既存の仕組みに問題点や不満があると感じている
  • 新しい仕組みに魅力や効果がありそう(上記の問題が改善されそう)

対して、組織では既存の仕組みで回っていることが多く、この問題点や不満に気づいていないことも多いです。

また別の書き方をすると、新しい仕組みを導入しなくても問題はないのです。

なので、この「問題はない」と感じている人達とのギャップを乗り越えて、組織へ導入していくということを推し進めなければならないのです。

また、新しい仕組みを入れることで全てが解決するケースはとても少なく、これまでとは違った課題や問題が発生することが多いです。

それらも含めて、進み続けるので、周りから冷ややかな目で見られたり、認められることが少なかったりと、推し進める立場の人は本当につらいのです・・・。

でも、必要と感じているのならば、夢ばかり語らずに、地道に泥臭く進めましょう。

では、どうやって進めるのが良いのでしょうか?

 

組織に新しいことを浸透させる方法とは?

私の経験から書くと、「トップダウン+ボトムアップ」の両軸で攻め続ける方法が良いかなと思います。

「トップダウン」と「ボトムアップ」の片方だけで推し進めようとしたときもあるのですが、継続的に浸透できなかったりすることがあります。

この両者には、それぞれ出来ない理由があるのですが、シンプルにひとつだけあげると下記の理由があったりしました。

hcd-roundtable-01

なので、これらをどうやって解決しつつ、進めていくかといった点を考えていくのが良いと感じています。

 

まずは組織を2つの軸で分解してみる

組織といっても、色々な形があると思うのですが、日本の多くの会社は社長を頂点にしたピラミッド型になっていると思うので、その組織に軸を設けて、それぞれ考えてみます。

HCD-Netラウンドテーブル-20161117

資料より抜粋

この「横軸」と「縦軸」に関して、できることを考えてみました。

 

横軸のチームやプロジェクトに対してできること

「領域を横断して対話ができること」

シンプルに書いていますが、とても難しいことだと思っています。

たとえば、チームやプロジェクトで様々な職種の人達とコミュニケーションを取る必要があったりすると思いますが、そういった仲間たちへ、新しい仕組みの必要性や参加を促す行為ができないと、組織という前の段階で難しいです。

なぜなら、隣の人へ熱意を伝え、一緒に動かしていく仲間としていかない限り、誰も一緒に行動を共にしてくれません。

ストレートにお願いして、共感してくれる場合の方が少なく、結果的に巻き込まれてしまって手伝っている状況を作れるのが理想です。

リーダーシップ論などで語られる、最初のフォロワーを作るまで、とても寂しく不安になるのですが、こういった経験もせず、「組織へ導入できない」など、言い訳をしていないか、ちゃんと振り返ってみましょう。

 

縦軸の上層部に対してできること

「小さな成功を積み上げ、信頼を得る」

縦軸の組織について、チームでの領域横断に加え、立場が違う人達へも伝えていくことが多く、コミュニケーションを頻繁に取ることができない場合があります。

その上で、どのように進めていくかと言うと、まずは小さな成功を作り、信頼を少しづく築いていくのが良いかなと思っています。

これはデザインといった領域の話はなく、携わっている業務への貢献や会社への貢献となる場面を考え、必要とされる場で役割を柔軟に変化させてパフォーマンスを発揮していくことで、貢献する場面が増えてきます。

すると、人としての信頼関係を築くことができ、「UXのことはあいつに聞けばいいらしいよ?」とか、「あいつに意見をきくと、何か前に進められそうになるし、いいよね。」とか、何らかの噂が社内に回っていけば、やりたかったことの発言や行動に協力してくる上層部は増えやすいです。もちろん、責任も伴いますが、チャンスが回ってくるのです。

私の場合、他の領域を学び、相手の領域の言葉で言い換えができるようになることを努力しています。

特に抽象的なものほど、数字などの分かりやすい要素を利用しつつ、立場が違う人へロジック的に説明できるようにします。

言い回しなど伝え方などの言葉の違いがあっても、サービスを利用するユーザに届けたい本質的な価値は同じようなことが多いため、そのためなら率先して領域を横断した通訳として動いた方が、会社やチームのパフォーマンスが上がることが多いです。

その上で役割以外の部分でも想定上の結果を出すように努力はします。

たまには失敗することもありますが、それでも結果を残せるべく、無駄なことをやらないように心がけています。

このように、組織を上下にコミュニケーションおよび通訳する立場が多くなってくると、必然的に「トップダウン」と「ボトムアップ」を併用し、交わり合う部分を作っていったりします。

この両方の立場を理解した上で、通訳できるようにコミュニケーションが行えると、組織への浸透もしやすくなると思います。

 

おわりに

長々と書いてしまいましたが、組織への浸透が正しいのか、浸透した後が大変なのかは、やってみなければ分からないことが多いです。

是非、実践者が推し進めなかったことを後悔しないためにも、挑戦していってほしいなと思います。

また、こういった内容で困っている方がいたら、相談にのりますので、お声がけください。 -> @endout

最後に、私自身が組織やリーダーシップで参考になった書籍を3つ書いておきます。

企業変革力

 

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

 

チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

 

前回の内容はこちら

UXデザイナーの信頼を取り戻すために考えてみたこと:スキル編


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